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autolink DG/S02-090 カード名:勇者アルマース カテゴリ:キャラクター 色:青 レベル:1 コスト:0 トリガー:0 パワー:4500 ソウル:1 特徴:《勇者》?・《武器》? 【永】相手のターン中、このカードのパワーを+1000。 【自】このカードがアタックした時、クライマックス置場に「魔王アルマース」があるなら、あなたは1枚引き、自分の手札を1枚選び、控え室に置く。 姫様のためなら死ねる!! ・・・・・・できれば死にたくないけど!! レアリティ:C illust.原田たけひと 相手のターン中は1/0の5500と優秀。 CXシナジーはCX自体の効果も合わせると2枚ドローして1枚捨てるというもの。 デッキ圧縮が可能な上、前衛に3人いれば最大3回、合計4枚まで新しいカードを手札にする事が出来る。 ・対応クライマックス カード名 トリガー 魔王アルマース 2
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第十一章-第二幕- 虚ろな交渉のテーブル 第十一章-第一幕- 第十一章-第三幕- 新たにキョウカ王妃を加えたジルベルト達勇者軍主力部隊は、 速やかにアイリーン・マフィア方面への移動を済ませ、 もう既にアイリーン・マフィアへと来訪しようとしていた。 「すみません……もう少し引き止めておけば、 遊びに来てたコンラッド君も 今すぐ参戦出来たと思うんですけど……」 と、申し訳なさそうにメイベルが言う。 「構わないわ。でも一応連絡だけは続けてもらってね。 レッド・ワイズマンMk-Ⅱがあるのと無いのとでは 海洋戦力そのものが根本的に変わってくるんだから」 「ウチの構成員の人にやってもらっています……」 ソニアは思ったより人員集めが上手くいかない事に嘆息していた。 そしてアイリーン・マフィア内部。 『お久しぶりですー』 「おう、ジルベルト。相変わらずのようだな」 ジルベルトは礼儀正しく挨拶し、叔父ケヴィンは微笑んだ。 「早速ですけどお父様……あの二人を呼んでいますか?」 と、メイベル。どうやら先に言っていた『友達』を呼んだらしい。 「ああ。俺の権限で呼んでおいた。 そのうち来るから待っておいてくれ。 ソニア、それにルシアもそれでいいな?」 「はい」 「分かりましたっ」 「それと……」 ケヴィン、グスタフ両名、膝を付いて挨拶する。 「キョウカ王妃殿、お久しぶりです、 この度は随分と難儀な目に遭われたようですが……」 「我々アイリーン・マフィアは総力を結集して、 本部奪還の協力に当たらせていただきます」 「そっ、そんなかしこまらないで下さいな…… なんだか恥ずかしくなってまいりましたわ。 私、そんな大層な人間でもありませんから……」 顔を真っ赤にして二人を嗜めるキョウカ。 どうやらキョウカはあまり飾り気の無い人物であるようだった。 「はっ、では軍礼のみで失礼させていただきます。 ところで、主力部隊の主目的をお聞かせ願えますか」 あくまで丁寧なケヴィンに対して、ジルベルトが一歩前に出た。 やはりリーダーなのか、場をまとめようとしているのだろう。 『主目的は戦力の結集なの。敵のメインターゲットは レイリアさん、エイリアさん二人だけみたいだから、 僕達は何としても二人を守る必要があるのー』 と、メールで素早く的確に説明するジルベルト。 「……勇者軍メインメンバーの 引き渡し要求をしてきたということか。 それはまた随分と穏やかじゃないな。応じる姿勢が無ければ、 敵はその他のメンバーにも 手を出してきかねないという事なのだろう」 「だが、ケヴィンよ。その両名を引き渡すなどというのは論外だ。 そもそも引き渡した場合、 生命の保証はまったく出来ないだろうし、 エドウィンの頃から戦い続けた当代最強レベルの人材を失うなど、 勇者軍としては断じて認められる事態ではない」 「おじいの言う通りだ。可能な限り戦力を結集させるぞ。 俺やおじいが直接出向くのは無理だが、ここから通信網を建て直し、 出来るだけ多くのサブメンバーをジルベルト達に合流させよう」 どうやら方針は決まったようである。 だが、彼等が思っているよりもすぐに事態は動き出す。 「敵襲! 敵襲だーッ!」 兵士達の絶叫が周囲にこだまする。 ばばっ! 全員が立ち上がる。対応を協議する必要は無い。 慣れた防衛戦である。直接指揮を執るケヴィン、グスタフを置いて、 一同は速やかに外へと出る。 「わわっ!?」 ルシアは外を見るや否や一歩退いた。凄まじい敵兵の数である。 よほどの資金力をバックにしているのだろう。 規模で言うなら、前戦役のウィルスユーザーズ並か、それ以上だ。 流石にウィルスユーザーズの主力部隊ほどではないが、 敵兵の数は百ではきかないほどだ。 「くっ……人海戦術か……惑星アース国際平和機構も アーム城もそうやって襲われたってのに……ワンパターンね!」 ソニアも呆れているが、事は楽ではない。 すると無造作にキョウカが前に出てきた。 「ちょっ、キョウカさん、危ないですって!」 「まずは交渉です。それに何かあっても、必ずあなた方が 守って下さるのでしょう? 駄目なら退きますわ」 ソニアの制止も聞かず、キョウカはどこから持ってきたのか 拡声器を取り出して交渉へと入った。 「どこのどなた達かは存じ上げませんが、 惑星アース国際平和機構への攻撃を 強行した方達とお見受けしますわ。 是非、ここは話し合いの余地を持つべきと思いますが……」 どうやら敵部隊の隊長と思しき人物がそれを聞いて前に出た。 隊長と言っても末端レベルのようで、敢えて名乗りはしなかったが…… 「惑星アース国際平和機構のカザミネ長官とお見受けする。 その前に、何故貴女が勇者軍の拠点にいるかを問い正したい。 その回答如何によっては問答無用で攻撃を加えさせてもらうぞ」 「どうやら御存知無いようで……私のフルネームは キョウカ=カザミネ=ザン=アーム。アーム王家当主、 イスティーム王が妻であり、 同時に勇者軍情報部少将でもあります」 「……そういう事か。難儀となって身内を頼りおったか。 まあいいだろう。聞くだけ聞いてやろう。言え」 その横着な態度に後方のジルベルト達はかなりムッとしたが、 キョウカは構わずに話を続けた。 「何故、勇者軍のメインメンバー、 レイリア=ルスト及びその妹エイリア=ルストの両名を それほどまでに欲するのかをまずは問いましょう」 「それをそちらが知る必要は無い。ただ、引き渡せば良い。 そうすれば当面の間、勇者軍への攻撃は控えよう」 「当面の間? それでは交渉にもなりませんわ。 それに自衛互助組織である勇者軍のメンバーとしても、 両名の引渡しは断固として容認出来ません。 そのような下劣な行為は、身内を売るに等しい行為ですわ」 「話にならんな。やはり問答無用に攻めるべきだった。 だが交渉しようという努力だけは買ってやろう。 俺達が直接あんたに攻撃を加えるのだけは無しにしてやろう。 とっとと後ろにすっこんでいるがいい」 「……平行線ですね……」 交渉が失敗し、すごすごと引き返すキョウカ。 どことなく哀しげな表情だったが、 諦めの色は見せてはいなかった。 「ごめんなさい、ジル君。せめて私なりに 役に立ちたかったのですが…… どうやら相手はかなり強行な姿勢を取っているようです。 レイリアさん、エイリアさん両名確保後の対応は不明ですが、 恐らく人道的な扱いはされないのは明白でしょう……対応を……」 『分かってるの』 ジルベルトの目に緊張が走る。それにつられて メイベル、ソニア、ルシアも 実に多数の相手と戦わねばならなくなった。 キョウカが建物内に入るのを確認すると、敵兵が動き出した。 きっちりと約束は守る辺り、 最低限の倫理だけは持っているらしいが、 それがレイリア、エイリア両名にまで及ぶ保証はどこにもない。 もはや直接戦闘は避けられなかった。 「目標、アイリーン・マフィア内部の捜索だ! たとえ勇者軍だろうと、邪魔者はすべて蹴散らせ! 突貫!」 「末端レベルの雑兵風情が何を偉そうに! 勇者軍メンバーを拉致監禁しようだなんてふざけたこと、 許しておくわけないでしょうに! 背水死守!!」 ルシアの号令で、全員が散開。 四方から包囲していた敵勢力に対し、 四人での真っ向勝負が始まった。 <第十一章-第三幕-へと続く>
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第十五章-第一幕- 地を駆ける忠の駿馬 第十四章-第三幕- 第十五章-第二幕- レイリア、エイリア、サイモンと合流し、大きな目的の一つを果たした 勇者軍は、続けてキョウカ王妃とイスティーム王、 並びにその娘ユイナ姫とを再会させる方向で話を進めつつ、 敵を撃退しながら出来る限りの情報を探るという方向で話がまとまり、 チルド・シティからすぐさま出立。遂にザン共和王国領内へと 本格的に足を踏み入れるに至ったのである。 そして真っ先に立ち寄ったのは、ヴェール・シティ。 レースで繁栄を得た、海洋都市である。 その海洋都市に足を踏み入れ、 さっそくそこら辺をほっつき歩いていると、 何やら器用に二足歩行する黒猫らしき生き物が こちらの猫達に近寄ってくる。 「にゃーにゃーう」 「にゃんにゃんにゃん!」 「にゃーにゃ!」 「にー!」 何やら盛り上がっているようだが、レイリアは一目で見抜いた。 あれはケット・シー。以前とある勘違いから 勇者軍を苦しめた妖精族だが、和解したので何やら猫同士、 親睦を深めているのだろう。 「ほう、ケット・シーとはな。珍しいものを見たぞ」 と、ヴァジェスが大仰に驚く。竜族のテリトリーでは まあ見ないであろう生き物なので当然だが。 だが、そこからが妙だった。 慌てて、きなこを筆頭に猫達がジルベルトにすがりつく。 「?」 「にゃーにゃーにゃー!」 何やら必死に伝えようとしているらしいので、 テレパス能力を解放して、ジルベルトは愛猫達の心を読む。 (この街が誰かに包囲されてるって言ってるよ!) (しかもどうやら、僕達を探してるみたい!) (マスター、脱出しよう、急ごう!) (あのケット・シーはそれを教えに来てくれたの!) あんみつまで加わって凄い剣幕で怒鳴りたてるので、 最終的にジルベルトはどう伝えていいか混乱してしまった。 「敵」 と、ゼクウがジルベルトが伝えるべき事を察して言い放つ。 「何だと? 本当か、ゼクウ」 「伝」 猫達が言いたい事を伝えたのみ、と言いたいようである。 それを大まかに察して、ヴァジェスも指示を出す。 「あまり騒ぎ立てるな、ここは市街地だ。 まず猫共とレイリア、エイリアは キョウカ王妃の護衛に回れ。 こちらとしても防衛対象は 一箇所に集まっていて欲しいからな」 「うん、分かった」 「任せておいてくれ」 「ゼクウ、偵察を頼むぞ。敵の規模と脱出ルートの確認を頼む」 「了」 ゼクウはすぐに去っていった。 「残りは前衛に出る。いいな? 気付かれないに越した事はない。 ジルベルトとゼクウは心配無いと思うが、出来るだけ 無駄口を叩かないように、静かに脱出できれば理想的だ。 逃亡しつつの戦闘となると、 キョウカ王妃に無理が出るからな」 「了解」 ルシアを筆頭に、全員が頷いた事でこの作戦は承認となった。 ゼクウの到着を待つこと約三十分。彼は戻ってきた。 「完」 偵察任務を完了したようで、概要をメールで送信してきた。 『敵は四方から包囲を敷いているが、むしろそれ以外が手薄。 我は、北西ないし、南西からの脱出を推奨するものである』 「ご苦労。ならばどうせ北に進むのだ。北西から行くぞ」 「よし、分かった」 ヴァジェスの指示にテディが頷き、全員がひっそりと歩き出す。 キョウカ王妃も念のためにと用意したフードをかぶって顔を隠す。 市街地での騒ぎは出来るだけ避けたかった。 何としても脱出したいところだが、無事にいく保証は無い。 そして街の出口にて、検問らしきものが用意されていた。 明らかにネイチャー・ファンダメンタル軍のものである。 「お前はただの市民だな、通って良し!」 また一人、市民が通過したと思しき声が聞こえる。 「さあ、次の者、前へ!」 係官と思しき人物が、勇者軍を見定める。 「…………武器はともかく、特に不審な点は見当たらん、か。 妙に人数が多いのは若干気になるが……」 入念にチェックして変装したのだから当然とも言えるが、 敵は思ったよりしつこいようであった。 「…………まあ、いいだろう。通れ!」 内心、勇者軍全員はホッとしながらも悠々と通過―― 「待てぃ!」 しようとした時に係官が制止してくる。 「な、何か?」 ソニアが作り笑いしながら切り抜けようとするが、 残念なことに敵も甘くはなかった。 「何かじゃない! その女性の物腰や身のこなしは、 VIPレベル特有のものだ! 何故、こんな所に そんな重要人物がいるのだ!? 戻って来い!」 キョウカの物腰の独特さは、 よほどの貴人であると彼には映ったらしい。端から見れば 分からなかったが、見る人が見れば分かるのだろう。 もう演技は通用しそうに無かった。 「ちっ、バレたか……逃げろ、キョウカ王妃!」 コンラッドが必死にキョウカ王妃に前を歩かせる。 「キョウカ王妃だと! まさか貴様等は!!」 「通過寸前まで来てから気付くようでは遅いな!」 テディがハンマーで地面を叩き、 地面を隆起させて即席のバリケードを作る。 「おのれ、包囲網の薄い所を狙ってきたか、 今すぐ隊長に知らせろーッ!」 大声でバリケードの向こうから係官が喚き立てるが、もう遅い。 キョウカ王妃を気遣いながらも、じわりじわりと 勇者軍主力部隊は遠のきつつあった。 次第に包囲網から兵士達が離れ、勇者軍の追撃にかかる。 着実にそれを退けながらも、 キョウカ王妃の撤退がいまいち進まない。 レイリアとエイリアが同行している上に、 肝心の王妃の足が遅いのだ。 「ちっ、厄介な!」 ドルカスが麻酔銃を乱射しながら、悪態をつく。 敵の兵士の数がやはり尋常ではない。ウィルスユーザーズなど 遥かに凌ぐ規模で活動しているとしか思えないのだ。 幸い守るべき対象が撤退中という事もあって、 防衛に専念すれば撃退は出来なくも無いが、 それでは逆にキョウカ王妃と離れ離れになる。 一応レイリアとエイリアがついているとは言え、 それはそれで多角的配慮面から危険だと言える。 いっそキョウカ王妃が俊足の持ち主なら 一緒に走る方が安全なのだが―― と、いきなり勇者軍の真正面に一人の男が立ちはだかる。 「見つけたぞ、勇者軍。このシーゲル=クーパーの包囲網を ここまで掻い潜るとは、やってくれるが……ここまでだ」 「あなたが指揮官なのね!」 フローベールが息巻いて早速攻撃を仕掛ける。 「間合いが甘いわ、素人!」 びっしぃッ!! フローベールとベアトリスの連携攻撃を苦も無く防ぎ、 手にした鞭でベアトリスを叩く。 「ひひんばー!」 「ベアトリス、大丈夫なの!?」 あまりの痛みにもがくベアトリス。 殺傷そのものよりも痛みを与える事にこだわった構造の鞭らしい。 「ふふははは、獣風情が一人前に苦しむか! ならば娘、次に同じ目に遭うのは貴様だ!!」 冷静に話していたかと思えば、急にテンションを上げるシーゲル。 「可哀想じゃない! なんでそういう事するの!」 ベアトリスをさすってやりながらフローベールが猛抗議する。 「貴様には分からんだろう! 生き物の悲鳴というものによって 我が身に与えられる優越感! 快感! これはたまらんものだと!」 「分かるわけないでしょう! もう許さない!」 「待て、フローベール、軽率だ!」 ベアトリスから降りて突貫するフローベールを 制止しようとするバスク。だが、もう遅かった。 「ふんっ!!」 びしばしッ! 「ぐっ!!」 鋭い悲鳴をあげて、フローベールがその場に突っ伏す。 喉元を二回も叩かれ、相当に苦しい目に遭っているようだった。 「かっ……は……」 ロクに呼吸も出来ずにかなり長い時間苦しんでいるが、 ようやく落ち着くと、敵を睨み据える。 「なんだ、その目は!」 ごすぅッ! フローベールを雑に蹴り飛ばすシーゲル。 「がっ!!」 フローベールは更に吹き飛ぶ。 顔を蹴られたらしく、流血していた。 「野郎、もう勘弁ならん! ヴィッセル!!」 なおもフローベール一人を執拗に攻撃しようとするシーゲルに対し、 バスクが激昂して突撃しようとするのを、メイベルが制止する。 「止めないでくれ、メイベル!」 「自分が圧倒的に人より優位だと 思い上がっている人に対してなら、 私が行かなきゃならないの…… それに適しているのは私だから」 「メイベル?」 「よくも私の友達を――許さない……!」 メイベルはいきなりスカーレット・アーマーのブースターを展開。 兵を制圧するために動けない他のメンバーに代わって、 シーゲルに天罰をくれてやるべく、真紅の雌鹿は飛翔する。 「なっ……アーマーナイトが飛ぶ!?」 驚愕したシーゲル。だが既に遅い。 かろうじて反撃するも、量産物の鞭などでは スカーレット・アーマーに傷すら付けられなかった。 「アフターバーナーターックル!!」 がごしゃっ! 「がっ!?」 メイベルは時速500kmを突破するスピードで激突。 とんでもない勢いで地面を滑るシーゲル。擦過傷だらけだ。 「メイ……ベル……」 「フローベール! 大丈夫なの!?」 「痛い……けど、だいじょぶ。傷は深くはないみたい」 シーゲルはよろよろと立ち上がる。 流血している自分が信じられないようであった。 「痛い……痛い? 痛い、痛い痛い痛い! 馬鹿な、馬鹿なぁぁ! このような事があっていいはずは、無ぁぁぁいぃぃぃぃ!!」 狂ったように怒り狂うシーゲル。 「許せん! 一人たりとて逃がすな!! 全員生け捕りにしろ! 私自ら、嬲り殺しにしてくれる! 覚悟するがいい!!」 シーゲルの指示で敵の攻勢はより一層激しくなった。 このままではキョウカ王妃が危ない。 少し離れていたレイリア、エイリア、キョウカ王妃の小隊は、 ネイチャー・ファンダメンタルの主力部隊に ほどなく追いつかれようとしていた。 「まずいね……どうしよう」 エイリアが呟く。 「すみません、足手纏いで…… 最悪、私一人置いて行っても……」 「そんな事言っちゃ駄目だよ、キョウカちゃん、ほら、急ご」 「レイリアさん……でも、大丈夫なのでしょうか……」 「世界最強の勇者軍に守られてるんだよ、もっと自信持って」 レイリアは懸命に、キョウカ王妃を励ます。 だが、すぐ後方にまでシーゲルが迫っていた。 どうやら防衛網を強引に怒り狂ったまま突破してきたらしい。 「来るのか!」 エイリアが、続いてレイリアが迎撃態勢を取る。 「キョウカ王妃、かぁぁぁくごぉぉぉぉぉぉ!!」 キョウカ王妃だけを狙って、シーゲルの鞭が飛ぶ。 そんな攻撃がキョウカ王妃に回避出来るわけはなかった。 が、その瞬間―― 「ぶるっひひひぃぃぃぃぃぃぃぃん!」 ごがッ! シーゲルの前に割り込み、 空中で身体を捻りざまに後ろ足で蹴る馬。 「ごふぁっ!!」 シーゲルが無様に吹き飛ぶ。 馬は見事に着地し、地面を滑走する。 そして落ちたシーゲルの所へ一直線に向かい―― ぼす! ぼす! ぼす! ぼす! ぼす! ぼす! 「げはっ! ごふっ! ちょっ! やめっ! がっ! べぶ!」 これまた怒り狂って、その健脚で何度も何度も それはもうしつこくしつこく、ひたすらに シーゲルの腹やら頭やらを蹴りまくる雌の馬。 いい加減シーゲルが動かなくなったのを確認して、 勝ち誇るように鳴く馬。なんとなく誇らしげだ。 呆然と見守っていたキョウカ王妃はその馬と、 それに付けられている鞍と鐙に見覚えがあった。 「ち……チトセ?」 「ひひん!」 嬉しそうにキョウカ王妃に近寄ると、乗るように促す。 それはユイナ姫の愛馬であるチトセそのものであった。 「そう……ありがとう。 あなたがユイナの代わりに助けてくれるのね」 そう言うと、キョウカ王妃は意外に軽々と騎乗し、手綱を握る。 「さあ、一緒に行きましょう。ユイナの所へ」 「ぶるるっ!」 ひと鳴きして、キョウカ王妃と猫を乗せたまま、 全力で駆け出すチトセ。 「エイリア、これで一気に脱出出来る。走るよ!」 「分かってる、遅れるな!」 レイリアとエイリアも全速力で走る。 前線も一気に動くキョウカ王妃に気付いた。 「急にキョウカ王妃の移動速度が上がった……何があった!?」 バスクがフローベールの手当てをしつつ驚くが、 ルシアはもっと冷静だった。 「そんなモンどうでもいいでしょ! 原因は知らんけど、 これならみんな全速力で走れば振り切れるわ。逃げるわよ!!」 「分かりました! ベアトリス、きついだろうが頼むぞ!」 「ひひんばー!」 バスクに励まされ、フローベールを乗せてベアトリスが飛翔する。 次いでバスクがそれを護衛するように馬を走らせる。 「ヴィッセル! ベアトリスに続け!」 それらに続き、残りのメンバーが順次離脱していく。 殿をメイベルとヴァジェスが勤め、無事に振り切った。 ネイチャー・ファンダメンタル側も、 指揮官が気を失ったままでは無理な追撃戦を行う事も出来ず、 取り逃がすしかなかったようである。 勇者軍は速やかに移動しつつ、大きく西進して、 湖の町、ハイアード・タウンへと苦もなく到達しつつあった―― <第十五章-第二幕-へと続く>
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総評 72点 【★★★★☆】 時間 シナリオ 調整 操作 独自 価値 キャラ やり込み グラフィック その他 評価 3 5 4 5 4 4 4 3 4 5 パパッと遊べるPC用フリーソフト「三十秒勇者」を拡張させて生まれたお手軽RPG。 30秒のRPG「勇者30」、30秒のSLG「魔王30」、30秒のSTG「王女30」、30秒のACT「騎士30」の4種のゲームが詰まった一本。勇者30が大元であったゲームだけあって、その他の3種は今一つ遊んでいてもパッとしない内容になっている。特に後半2つはイマイチ。 しかし、それぞれの物語は相互にリンクしており、ゲームを進めることでその繋がりが新たな物語を生み出すゲーム全体の構成は秀逸。そういった方向性で来ると考えていなかっただけに受けた感銘も大きかった。 サクサク遊べるゲームが好きな人には十二分に楽しい一本。時間に追われながら一気に魔王を倒してゆく爽快感は素晴らしい。ただ、こういったソフトの難点であるプレイ時間の問題はやはり本作でも健在で残念。 1:プレイ時間 【★★★☆☆】 クリア優先でプレイして4種+追加ゲームクリアまで約8時間。勇者30に用意されているやり込み要素を充足して13時間程度。一応にも「30秒で世界を救う」と謳っているだけに、女神にお金を払って時間を戻すなど実際には30秒以上はかかっているとはいえ、1ステージにかかる時間は数分。長いステージでも10分はかからない。それでボリュームを出せという方が難しくはあるのだが、一応ストーリーの分岐やアイテム収集など楽しみながら長く遊べる要素が用意されている。 ……のだが、そういった工夫がなされていたのは勇者30くらいのもので、他のものにはあまり工夫も見られなかったように感じられた。 2:ストーリー(シナリオ) 【★★★★★】 あらすじ: 時は女神歴100年。世界を気ままに旅していた一人の旅人は、魔王の世界ハメツ宣言に慌てた王様によって突如勇者に仕立て上げられてしまう。とりあえず旅には出てみたものの、魔王の唱えた世界をハメツさせる呪文が発動するまでの猶予はたったの30秒。勇者が魔王の元に辿りつくよりも早く、世界の破滅の瞬間が訪れてしまう。もうダメだと瞼を閉じたその瞬間、勇者に救いの手を差し伸べる者がいた。それこそが時の女神……とは名ばかりの守銭奴だったのである―― あらすじは多少脚色アリ^^ 魔王の創造した世界ハメツの呪文を最初のストーリーで辛うじて食い止めるのだが、それを伝える存在が次々と世界各地の魔王にそれを伝え歩いてしまう。そこで勇者と時の女神はそれを追いかけながら世界を救って行く、というのがメインストーリーとなる。ステージは分岐含めて全部で30存在しているが、中には中ボスとでも言うべきランクの高い魔王も存在する。そういった場面では、それまでのステージで様々なイベントを経て力を合わせた仲間たちが結集して魔王に挑む、などのいかにもRPGらしい熱いシナリオが存在するのも良い。一つ一つのステージも、非常に軽いノリ・テンションの魔王や時の女神やキャラたちの織り成すイベントの数々が非常に楽しく仕上がっており○。一つ一つはありがちな展開などが多いが、それをキャラクター達の持つ魅力やノリで補うタイプの物語。管理人はもともと王道好きなので十分なのだが(笑 又、4種類のゲームはそれぞれ物語が繋がっており、上記勇者30が女神歴100年、魔王30が女神歴200年、王女が300年、騎士が500年に起きた出来事として描かれている。そして、これらをクリアした後に現れる最後の物語ではそれまでの彼らの物語に終止符を打つものとなっている。この構成も純粋に面白かった。 3:難易度設定・調整 【★★★★☆】 難易度は低く設定されており、勇者~騎士に関わらず大抵のステージは1~2回のプレイで攻略できる。 ゲームのテーマが30秒という限られた時間であり、そのスピーディなプレイ感覚こそ大切にするべき部分なのだから、本作の低い難易度はそこにマッチした良い設定。軽快に遊べるゲームの中でもトップクラスである。 調整面の難は、既述の通り主に王女と騎士における「先に進んでも難易度が全く変わらない」状態。レベルの存在しないこの手のゲームではありがちであるのだが。。やはりゲームは先に進むほど難しくなって然るべきである。それが無い為に手応えが一定で、マンネリ化を早々に招いてしまっている。 4:操作感(プレイ感覚) 【★★★★★】 非常に手軽な操作が可能でレスポンスも良く、プレイ感覚において文句は特にない。 システムも操作自体も直感的でわかりやすく悩む必要が全くないのも管理人好み。 ロード時間も短く、イベント飛ばしも用意されており○。 5:独自システム 【★★★★☆】 →勇者30 町の中以外の全ての行動(移動・戦闘)中30秒からのカウントダウンがプレイヤーに迫る。基本的には、30秒以内に雑魚を倒してレベル上げ&資金貯めを行い、適度なところで時の女神にお金を支払って時間を戻す。これを繰り返し(必ずしも必要ではない。ステージによっては20秒ほどでクリアできるものもw)、最終的に魔王を倒すのが目的となる。死んでしまった場合もステージの開始地点に戻されるだけである。 この町では回復や装備の購入の他にも様々なイベントが用意されており、物語を盛り上げてくれる。 また、各ステージには2種の称号(特定の条件を満たすと貰える)や様々なアイテムが用意されており、これらを集めてゆくのも一つのやり込み要素になる。 ちと女神の時間引き戻しの値段が安すぎるきらいはある。 →魔王30 モンスターを召喚する能力を持つ魔王が主役。ジャンケンと同様の相性を持つパワー・スピード・ショットの3種の敵が配置されているステージを、それぞれ敵に対して相性の良いモンスターを召喚しながら蹴散らして30秒以内に目的を果たせばステージクリアとなる。 シナリオ中に少しより道をすると四天王と呼ぶ召喚モンスターを入手できたり、魔王が恋い焦がれるミレニアに関するサブイベントを見れたりする。この魔王30も、勇者30と同様に時の女神にお金を支払うことで時間を巻き戻すことが可能。 →王女30 時機は王女を複数の兵士たちが担ぐかたちで構成されており、敵や敵の攻撃に触れることでこの兵士たちが徐々に減少し、攻撃力や移動速度が低下する。この王女30にも各ステージに30秒の制限時間が設定されており、女神のカーペット上を進むことでお金を失いつつ時間を回復することができる。 この「時間」を大切にしすぎた為か、STGと謳っているのに被弾死が存在しない(どんなに被弾しても兵士が「減る」だけで時機が死ぬことは無い)のは残念。 また、ゲームのシステムとして「目的地まで行って戻ってくる」のが1ステージのサイクルになるのだが、全てのステージがその構成になっているのは流石にマンネリがある。出てくる敵もそれほど変わり映えしない。 →騎士30 魔物を一掃する呪文を唱える賢者を、何度死んでもよみがえる騎士を使って守り抜くのが目的のゲーム。 フィールドにはこちらに迫ってくる敵シンボルが複数配置されており、プレイヤーは騎士を操作してそれらへの攻撃を加えたり移動の妨害をしたりして賢者を守る。 一応1ステージクリアするたびに「寝て回復する」か「寝る時間を削ってアイテムを開発する」かを選び、複数存在するアイテムから好きなものを開発して持って行くことができる。……のだが、正直このアイテムの開発を別段行う必要もなくクリアできてしまう。少し勿体ない。これも王女30同様に、全てのステージの行動目的が同じで代わり映えが少なくマンネリ化が激しい。 →勇者通信 アドホック通信を用いて、複数のプレイヤーが一つのステージの魔王に対して誰が早く倒せるかを競う。 ……管理人は結局一度もプレイしていないのでなんとも言えません^^; 6:価値 【★★★★☆】 管理人の購入価格:4000円弱 あっという間に終わってはしまうものの、そこまでの楽しみが多く用意されており十分に楽しめる。非常に携帯機にマッチした内容は素晴らしい。PSPということで値段が張らないのも良い。 基本的には誰でも手軽に楽しく遊べるジャンルのゲーム。 7:キャラクター 【★★★★☆】 主に時の女神なのだが、登場キャラクターの面々がどれも良いキャラをしていてゲームを楽しく盛り上げてくれる。この薄すぎず濃すぎないキャラ達が非常に良い味を出している。あえての2Dで描かれているのもキャラ達の魅力を引き出しているし、時折差し込まれるリアル絵の味もより引き出している。 8:やりこみ要素 【★★★☆☆】 各ゲームに用意された既述のやりこみ要素の他に、「女神の部屋」という収集要素のまとめ項目が用意されている。勇者30に出てくる様々な武器防具や、魔王(シナリオの進み方によって会わない魔王も複数いる)の一覧表などを集めると図鑑が埋まり魔王などの設定画像を見ることができる。 正直それほど報酬が嬉しいものでなく、全部埋めてやろうという気をそれほど湧かせてくれないのが惜しい。 9:グラフィック・アニメ 【★★★★☆】 あえて粗いドット絵で統一表現されたキャラクターの面々が非常にいい味出している。 本作の方向性によくよく合致しており、下手に画像を頑張るよりも○。 10:その他 【★★★★★】 あと一歩何か用意されていたら素晴らしかったなぁ、という内容。いや十分面白いのだが。 手軽なゲームがその壁を超えてくれると、非常に良いものになる。次回作を期待できない作品(複数出しても新しさを出すのが難しい)だけに、本作をもっと作り込んでほしかった。
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二つ名:月光の勇者 名前: とある魔王との戦いで己の力と魔王の力が衝突暴走し、魔王と一つになってしまった勇者。マイナスの感情が高ぶると体を魔王に乗っ取られてしまう。魔王の時の方が人気があるような気がして複雑な気分。 彼の正義は潔癖症のようなものだ。 彼の定義による悪とは、”魔王とそれに属するもの”の事だ。 物心ついた頃から、反吐が出るほどにそれらが憎くて仕方なかった。 理由もわからない、たまたま見かけたゴキブリを容赦なく殺すが如く、それを排除することに躊躇は無かった。 たまたま彼の住む世界では、その行為が正義と呼ばれていたに過ぎない。 故に彼の心には誰かを助けようだとか、自己犠牲の精神なんて類のものは、微塵も存在していない。 ただただ”悪と自分が定義しているもの”をこの世から根絶したいのだ。 そんな屈折しながらも絶対的な信念を持った彼が勇者になることは、必然であった。 長い年月、彼は魔界を歩き続けた。 彼を見つけるのは簡単だ。魔族の死体を見つけるか、血の匂いを辿ればいい。 最初こそ彼は魔族を殺す日々に、清涼感と充実感を感じていたが、 今ではただ、吐き気と焦燥感のみが溜まっていくばかりだ。 魔王を殺し、奴が鮮血を撒き散らしながら、堕ちた羽虫のように悶え苦しむ様を見下さなけれは、この吐き気は収まらない。 更に長い年月を経て、ようやく彼は魔王と対峙した。 その瞬間、互いが殺気を放つと同時に、腹の底から湧き上がってくる快感の予兆に思わず彼の頬は緩んだ。 互いの殺気がぶつかり、刹那の攻防が始まった。 長い年月磨かれた彼の修羅の剣技は、魔王に一切の遅れを取らなかった。 両者に疲労と傷が徐々に蓄積していく。 剣を振る腕は熱を帯び、視界が徐々にぼやけていく。 そして気づけば一歩、また一歩と、徐々に魔王の攻撃に後退を強いられていた。 膝が震え出し、腕が鉛のように重い。 徐々に情景が遅く、スローモーションになっていく。 あぁ、これは、しんだ。 その時、彼の視界の隅に、物陰に隠れる悍ましい造形の醜い魔族が映った。 おそらく魔王の優勢振りを見て、油断して物陰から覗いてしまったのだろう。 彼は文字通り最後の力を振り絞って、その魔族に飛びかかった。 ボキリという音と共に、限界を超えていた自分の足がへし折れたが、そんなことは構いやしない。 彼は死ぬ最後の一瞬まで、悪を殺したかったのだ。 剣が肉を深く貫き、鮮血が宙を舞う。 彼は自身の掠れた視界を疑った。 自分の剣が貫いたのは、あの醜い魔族ではなかった。 魔王が、あの物陰の魔族をかばい、自分の剣の串刺しになっているのだ。 その瞬間、彼の心の底から溜まりに溜まった快感が湧き上がり、脳天を突き抜ける。 視界は光に包まれ、彼は絶頂に達した。 もう動けない彼の腹を、瀕死の魔王の拳が貫いた。 しかし彼にもう痛みはない、あるのは満足感と絶頂感だけだ。 彼は徐々に消え行く命の灯火の中で、このために不死になったのだと実感した。 醜い魔族が、魔王に汚い声で喚き散らす。 彼は魔族の言葉なんて理解出来ないし、するつもりもない。 普段は魔族がなんと言おうが、それが彼の耳に届くことは無い。 喚き散らす魔族に向かって、魔王が何か呟いている。 何を言っているかなんて当然わからない、はずだった。 しかし彼は確かに、確かに聞いた。 「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、パパ……」 「ブジデヨカッタ……」 その瞬間、絶頂感は吹き飛んだ。 そして一気に湧いて出た多くの疑問に答えを探すよりも前に、彼は意識を失った。 そしてそれと同時に、魔王もまた息を引き取った。 魔王と勇者、互いの体を剣と拳が貫き合い、死してなお残った互いの信念と執念は、一つのリングを紡ぎ出す。 そのリングを駆け巡る二つの清い魂と邪な魂は、どろりと混ざった。 勇者が意識を取り戻した時、彼は大扉の前にいた。 人生初の転生を経験した彼は、理由のわからない猛烈な嫌悪感に襲われていた。 心の中に、どうしても取れない汚れがあるような、ギリギリ手の届かない位置にある死ぬほど欲しい物のような。 一度意識してしまえば発狂してしまいそうな程の嫌悪感。 『あなたの魂の中には、魔王の魂が混ざっています。』 不意に女神の言葉が彼の頭に響く。 彼の反応を見ないうちに、女神は一方的に言葉を続ける。 『あなたの信念が揺らぐ時、魂は入れ替わるでしょう。気をつけなさい。』 聞いただけで気を失いそうな絶望感を勇者は感じていた。 絶対的嫌悪の対象が自分の中にいるなどと、到底許容出来る事ではない。 「僕の信念が揺らぐことなど在り得ません!穢らわしい魂を切り離す方法を教えて下さい!」 『魔王は様々な力を持ちます。それを討ち滅ぼす事で、あなたの望む力を得る事も出来るでしょう。』 それを聞くなり、勇者はゲートを潜り、新たな魔界へと旅立った。 勇者には確固たる自信があった。 自分の信念が揺らぐ事など今まで一度も無かったからだ。 新たな魔界でも、魔族を見つけるや一瞬の躊躇もなく剣を抜き、斬りかかる。 「タスケテ!ボクナニモワルイコトシテナイノニ!」 勇者は思わず、剣を地面に落とした。 いつもはただ動物のように喚いているだけの魔族の言葉が、まるで聖界に住む人間の言葉のように聞こえたのだ。 その瞬間、彼の視界がぐるりと回転し、彼の銀髪が徐々に黒髪へと染まっていく。 彼は怯えて腰を抜かしている魔族に歩み寄って、膝をつく。 「怖い思いをさせてすまない。今のうちにもう行きなさい。」 魔族が遠くまで逃げるのを確認すると、視界がまた回転し、黒髪が銀髪へと戻っていく。 彼は絶望に膝をつき、その耐え難い屈辱に涙を流した。 見ている風景は同じでも、入れ替わっている間は行動に一切干渉できない。 自分ではないとはいえ、自分の声で自分の体で魔族を逃した事が許せなかった。 「必ず、戻ってみせる……悪を滅ぼす……容赦なく、必ず……!!」 決意を言葉に発し、それを支えに立ち上がる。 悪とは、正義とは。 その言葉の矛盾に、彼が気づくのはいつになるのだろうか。 彼の旅は長く険しい。 武器:「拒絶の剣」 月光の勇者の意志が、長い年月を掛けて剣に溶け込み、聖剣となった。 勇者が悪とみなしたものは、物質であろうとなかろうと両断する。 防具:「耳の上についてるカッコイイやつ」 女神から授かったので一応つけてはいるが、いまだ効果は不明。 それなんですか?と聞くと、睨まれるので注意。 技:具体的な技と呼べるものはない。 常に戦いに身を置き、死線を越え続けた精神力と判断力、容赦のない攻撃性を用いて戦う。 弱点:「魔王状態」 自身の信念が揺らぐと、勇者と魔王の魂が入れ替わり、魔王状態になる。 信念が揺らいだ原因が解決、または目の前からなくなる事で、再び魂は入れ替わる。 中の人:魔王 月光の勇者が魔族を殺すことしか興味がなかったため、名前すらわからない。 無駄な殺生を嫌って平和な国を築いていたが、月光の勇者が現れた事により、世界は一変。 国民を守るために、命を賭けて勇者と戦うが、娘をかばって勇者の凶刃に倒れた。 魂になってからも、無駄な殺生は行わず、平和な解決を第一に考える。 しかし、そんな魔王を怒らせた者は、月光の勇者をも死に追いやった力を、思い知ることになるだろう。
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二つ名:観察の勇者 名前: 詳細: とある機関で勇者と魔王について研究している研究員。勇者になった時点で研究対象となるはずだったが日頃の熱心すぎる研究態度から隔離は免れている。最近は特定の勇者を熱心に観察している その他:
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二つ名:変化の勇者 名前: 詳細: 全ての街が絶えず移動する世界(国?)のある森の近くに住んでいる 身長は150前後 18歳で最近勇者になった 猫や犬などのもふもふしたものが大好き スライムや蛇などのモンスターを嫌う(排除対象) 変化の森はスライムなどの毛の無いモンスターや動物が出ないので気に入っている 勇者になる前にこの森を見つけ、その後家出している 普段は好戦的ではないが森に害をなす存在は全力を持って排除する もふもふするものが害をなす場合は全力を持って懐柔する もともとは中級貴族の生まれで昔から秘密裏に変化の魔法を練習していた お嬢様育ちだけど箱入りということはなく家事や作法等はプロ?並である 大人びているが心の底で何かに甘えたいと思っているため、たまに子供らしい行動に出ることがあるが本当に親しい人か信頼してる人の前でしか見せない 【服装について】 胸や腰のファーやお尻のしっぽ部分は取り外し可能 靴はローファーの類が多い よく手に持っている杖?のようなものは飾りで魔女っぽいから持っている いつもの服装は外出する時や来客時用で普段は黒のワンピースなどを着ていることもある 【普段の生活など】 勇者になってからいろいろな街から勧誘があったが(街の知名度アップのため)、変化の勇者は勧誘の人が持ってくる特産品をもらうだけもらってお帰りいただいている 魔王や勇者の噂はここから耳にすることが多い 一般の人間に関して変化の勇者はたいてい無関心である たまに毛むくじゃらな人間もいるが変化曰く「何か違うわ」らしい 魔王や勇者のことは、○さんや○○さんと呼ぶ 過去に何かあるらしい 辛いものが嫌い 運動神経は人並みしかないので魔術を無効化されたらただの少女と同じである 【能力について】 人や物を動物に変化させる(一部は除く) 変化させた人の意識はそのまま 一般人を変化させると変化の勇者が戻さない限り戻らない 魔王勇者の場合その強さに応じて制限時間がつく 変化させられたものは一応能力は使えるが1部弱くなったり能力自体が少し変化してしまうこともある 無機物も少しの時間ではあるが変化させることができるし動かすこともできる 変化の勇者本体は戦闘能力は低い 変化の魔法は半径10m~20mの範囲で有効 一点集中にするともっと遠くまで変化させることができる 投げナイフなどを投げて刺さったら切っ先をハリネズミやヤマアラシなどに変化させてダメージをあたえるということも可能 【覚醒について】 普段はあまり戦闘を好まないため覚醒をする事はないがある事件のことなど変化の怒りに触れる行為を過度にすると覚醒するかもしれない 今のところそのような事は起こってないが変化の森を消失させたり、数多の勇者に出会うと確実に覚醒するだろう 覚醒する時、変化は怒り狂っているため能力を無造作に使うため周り10m~20mの範囲の物全てを変化させ、相手が死ぬまで追いかける。 それが勇者だった場合は死んでもリスポーンするためまた死ぬまで追い続ける また自身の一部を変化させ、運動能力を向上させるため、よほど速いものでない限り追いつかれてしまうだろう 【関係人物】 蓑の魔王(みののまおう) 【簑) ŎωŎ)】 自分の能力がわかっていないのにいつの間にか魔王になっていた魔王 変化の勇者になる前にある出来事から親友になった魔王 変化を庇い死んでいる 数多の勇者(あまたのゆうしゃ) 【数多)十w廿)】 蓑の魔王を殺した勇者 周りのものをすぐにほしがる強欲な勇者 元貴族でプライド高い 弱い魔王を大量に狩り、無数の能力を保持している 数多自身はそんなに強くない 能力自体も一つ一つは弱いが組み合わせると厄介 力押しに弱い
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第二章-第三幕- ライゼリーネ・タウン防衛戦 第二章-第二幕- 第三章-第一幕- ライゼリーネ・タウンに迫るスプレッダー幼生体の目の前に、 勇者軍はほどなく到着した。後ろに控えるもう一体が気になるが、 速やかに駆逐しなければ話は始まらない。 下手をすれば二体とも突破され、町に多大な被害がもたらされる。 最低限、一体だけでも最優先で撃破しなければならなかった。 (もう一人……せめてもう一人いれば……!) シエルの焦燥が、露骨にジルベルトに伝わる。 しかし一度撃破した経験からか、ジルベルトは充分に落ち着いていた。 (大丈夫) ジルベルトが頭を撫でてやる。 (勝てる。僕等は勇者軍だから) (分かってる。やるわ) シエルはすぐに落ち着きを取り戻し、呪文の詠唱に入る。 真っ先に動き出したのはジークだった。 ソニアに代わって、シエルのディフェンスとして盾となるのである。 「うむ、一宿一飯の恩義という感じが程よい!」 いちいち大仰に恩を売ってみせるジークに、 ようやく、らしさを取り戻したシエルが檄を飛ばす。 「そう思うんならきっちり守ってね! 呪文の詠唱も大変だから!」 「任せてもらおう!」 そして、ソニアは走り出す。スプレッダー幼生体へ向けて。 「はああああああッ!!」 凄まじい気迫と共にソニアが一直線に戦場を駆ける。 「ぎきゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 スプレッダーの幼生体は吠えながらも 何故か川の上で動きを止めた。怪しい。 ユイナ姫がいつでも動けるよう、 愛馬チトセを待機状態のままにしておく。 ジルベルトもソニアの傍に付くために動き出した。 「スプレッダー幼生体、覚悟!!」 ソニアが跳躍する。スプレッダー幼生体の多脚がソニアを襲うが、 ソニアは手甲一つで、それを弾き、 または受け流し、さらにはそれを掴み、 アクロバティックに身体を動かし、 その顔面に一発拳を叩き込もうとする。 「もらったわよ!」 しかしスプレッダー幼生体も諦めが悪い。 爪を大きく振り下ろし、ソニアを切り裂きにかかる。 がつっ! ずさささッ!! 大きく打ち払われ、ソニアはよろけるも、 見事に後ずさりつつ着地する。 「やるわね!」 ソニアは牽制のために呪文を即座に詠唱する。 「グランドバスター!」 地の属性を持つ魔力弾をもって、多脚を牽制しようとしたのだ。 しかし、目論見が甘かった。 「ぎゃぁぁぁぁぁがぁぁぁぁぁぁぁ!」 突如、スプレッダー幼生体の口から、 圧倒的な水圧の砲撃とも呼ぶべき 多量の水が放出され、ソニアを直撃した。 「がばっ!?」 ソニアに回避の余地は無かった。 そのまま彼女は大きく転倒し、流血を始めた。 「負……っけるもんですかぁッ!」 気丈にも彼女は起き上がるが、すぐにふらつく。 しかし、ユイナ姫に馬上から抱え上げられた事で、 無駄に血気を煽ってしまった。 「放して! あいつに一撃かましてやらないと!」 「そうはいきません、属性的に不利みたいですから、治療を!」 「くっ……!」 ソニアが歯噛みする。しかしそれとは関係なく シエルは詠唱していた呪文を解放する。 「ヒールバスター!!」 こういう時は詠唱呪文が短くて連打できる呪文の方がいい。 そういうシエルの判断であった。 一方でスプレッダー幼生体の水圧砲攻撃は続いていた。 どうやら川の水を吸収して吐き出しているようで、 その射程は決して長くはないものの、威力は侮れないものである。 一人前線に残るジルベルトは危機に晒されていた。 どうやらスプレッダーは、その環境に応じて技が変異するらしい。 この事実は貴重な情報で、全世界に 提示しなくてはならないものであるが、 とりあえず自分達が生還出来なければそれどころではないのだ。 (よくもソニアさんを……! いけない、冷静にならなくては) 怒りに心が曇りそうになるが、彼女は無事なのだ。 自分が冷静さを失えば、討伐に時間がかかってしまう。 それは許されないのだ。 「ぎきゃぁぁぁぁ!」 油断していると、また水圧砲が飛んでくる。 (くっ、このままでは……!) ジルベルトが水圧砲の連打に苦戦していると、ふいに後ろから 人影が現れた。見たことのない男である。 背も高い。誰なのか。 そんな疑問を抱いていると、無造作に男は スプレッダー幼生体に近寄る。 (危ない!? 逃げて!) ジルベルトが男をかばおうとしたが、男はそれよりも素早かった。 がきゃっ! いつの間に移動しているのかジルベルトにも識別出来なかった。 男は、スプレッダー幼生体の頭部を剣で一突きしている。 「ぎぎゃぅ、ぎゃっ、ぎゃっ、ぎゃぁぁぁぁぁッ!!」 痛覚にスプレッダー幼生体が身をよじる。 と、男はそこでようやくジルベルトに言葉を投げかける。 「ご苦労様。苦戦してるみたいだね?」 その殺伐とした戦場にあまりに似合わない柔和な声。 (一体、誰?) ジルベルトの疑問が首をかしげる形となって現れる? 「おっと、自己紹介もしてなかったか。誰かは知らないけど、 俺はライナス=ジーニアスって言うんだ。協力させてもらうよ」 (ジーニアス?) もちろんジルベルトはその姓に聞き覚えがあった。 勇者軍メインメンバー、ジーニアス家のことであろう。 となれば、まぎれもなく、 初対面かどうかすらも関係無く……仲間なのだ。 そんな間にもスプレッダーはひたすら暴れる。 「疾風剣!」 超音速の斬撃が、何度斬ったかもよく分からないほどに スプレッダー幼生体を滅多斬りにしてしまう。 恐らく、もう水圧砲など使い物になるまい。 (速い……速すぎてよく分からない……) 「で? 俺は何をすればいいのかな?」 ものの数秒で数十撃を叩き込んでからあっさりとのたまう金髪の男。 これだけ圧倒しておいて、この物言い。 頼もしいという言葉が相応しくないなら、 もう惑星アースに該当する言葉は無い。 水圧砲の使えないスプレッダー幼生体など怖くも何ともない。 だとすれば、彼にはもっと大事な役割を負ってもらおう。 そう思ったジルベルトは、かなり遠くに見えるもう一体の スプレッダー幼生体をただ、指差した。 (あっち) しかし、ジルベルトが指を指し終える前に金髪の男は動いていた。 察しが良いというべきか、言動にいちいち意味が無いというべきか。 そこにジーク、そしてユイナ姫が援護に駆けつけた。 「ジル君、今の誰!?」 (味方) ジルベルトの真意は、しかしあまり伝わらなかった。 首を振っただけなのでしょうがないかもしれない。 「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」 スプレッダー幼生体はなおもしつこく暴れ回る。 水圧砲を使うための口を破壊され、怒り心頭だ。 もはや前進に躊躇は無いのだろう。 「とどめだ、隊長、行くぞ!!」 (うん) 誰にも聞こえないほどの小声ながらも、ジルベルトは詠唱を始める。 (ライトキャノン) そしてやはり小声での呪文解放。しかし親譲りの かなり高い魔力によって、スプレッダーへ大ダメージとなった。 「ジーク=ルーンヴィッツァー、参る!!」 そしてジークの一撃が光る。 ざしゅっ! コアとも呼ぶべき部分にヒットしたのだろうか、スプレッダー幼生体は それきり動かなくなった。 「ユイナ姫、もう一匹はどうだ!?」 ジークの言葉に、周囲を見回すユイナ姫。 すると…… 「ぁぁぁぁぁぁぁぁ……ぁぁぁ……!」 遠くの方からスプレッダー幼生体の断末魔。 どうやらライナスが一人でとどめまで刺したらしい、と分かると、 ジルベルトは安心する、その後ろから、治療行為を終えた シエルとソニアも合流してきた。 (彼がやってくれたみたい) (彼?) ジルベルトの思いをすぐさまキャッチするシエル。 (ライナスって名乗ってくれた。ジーニアス家の人みたい) (本当!? ならとっても助かるわね!) シエルの表情に歓喜が生まれる。 「みんな聞いて。スプレッダー幼生体、2体目も駆逐されたわ。 やったのは、私達の仲間……勇者軍メインメンバーみたいよ。 名前は、ライナス=ジーニアスだってお兄ちゃんが」 「ほう!? 一人でか、やるもんだな!」 ジークがまず驚愕する。ソニアやユイナ姫も頷く。 「ふう」 そこへライナスが戻ってきた。 「さて、俺以外にスプレッダー幼生体の相手をしようなんて、 無茶な人達がいるなんて、ね。君達は何者かな?」 ライナスの言葉に、シエルが返す。 「彼はジルベルト=ストレンジャー。勇者軍筆頭よ。 そして私達は勇者軍主力部隊。そしてあなたも今日から ここの一員、そうよね、ライナス=ジーニアスさん?」 すると、初めてライナスの顔に驚きが浮かぶ。 「そうか、君達がそうなのか。だとしたらこの事態は 看過出来なくて当然だよね。じゃあ、改めまして、 よろしく頼むよ、ジルベルト君?」 (うん) ジルベルトはただ無言で握手する。 「そんで私が妹のシエル=ラネージュ。無口な兄の翻訳係かな」 「ユイナ=カザミネ=ザン=アーム王女です。 あなたとは、親類ですかね」 「ソニア=メーベルヴァーゲン。新米だけどよろしくね」 「ジーク=ルーンヴィッツァーだ、同じく新米だが、よろしく頼むぞ」 それぞれに自己紹介する。 「これはなかなか賑やかな旅になりそうだね、こちらこそよろしく」 歓迎ムードの中、ユイナ姫は指示をも忘れない。 「ビーム・カーテン部隊、ただちにスプレッダー幼生体の死骸を 除去して下さい……町に近い方からお願いします」 と、そこまで見回してみて不自然に感じた。 どうみてもいないのだ。二体目の死骸が。 「ライナスさん、確かに倒したんですよね? 二体目の幼生体を」 「うん、間違いない。なのに死骸が……無い?」 明らかに異常な事態だった。 一体目の除去作業もそのままに主力部隊は、 すぐに二体目の死亡地点へと向かった。 そこには残留物と思しき物体がいくらか残っていた。 血痕、甲殻の欠片などと、車両の轍である。 要は運搬の後、と言っても過言ではない。 「誰かがスプレッダーの幼生体を無断で持ち去った?」 シエルの疑問に、ジルベルトも頷く事で同意した。 「しかし、誰が!?」 ジークは当然の疑問を抱く。 「彼等ね」 ソニアはそう呟いた。 「アルマ・タウンで死骸の除去作業をしていた最中に 妨害を企てたあの得体の知れない人間達じゃないかしら」 「そんな人達がいるのか」 ライナスも驚きを禁じ得なかった。 「という事は、俺達の敵はスプレッダーだけじゃないわけか」 「そうです、ライナスさん。私達の敵はスプレッダーを利用して 何事かを引き起こそうとしている者達も含まれます。 まずはその真意を確かめる必要がありますね」 ユイナ姫の言葉に、ライナスも、ジークも頷いた。 「で、これからどうするのだ、隊長?」 ジークの更なる疑問に、ジルベルトは手を休めない。 情報端末に飛び込んでくる情報をチェックしているのだ。 (少しずつ駆逐されているスプレッダー幼生体……でも、 未だに多くの都市が危険に晒される可能性を秘めている) そして、スプレッダー幼生体の反応がやたらと近い都市を見つけた。 いや、そもそも都市ではない。しかし重要拠点だ。 妖精の森と呼ばれる地点であり、その中には 妖精王ヴァルキリーの居城がある。 そこを襲撃されれば、勇者軍との協力関係に重大な影響が出る。 もちろん看過するわけなどいかない。急がなければならない。 「お兄ちゃんが思うには、次の目標は妖精の森よ」 ジルベルトの意見をシエルが介し、全員が頷く。 (行こう) ジルベルトが黙ったまま歩き出すと、 誰ともなく付き従い始め、やがて列となって動き出す。 妖精の森へ向けて、主力部隊は歩き出した。 <第三章 へ続く>
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断章-第二幕- 解放される力 断章-第一幕- イグジスター戦争からしばらく後、たまたま立ち寄った オドネル・タウンにおいて、レイビーとゲイルは ゲボラ・マフィアの横行と残虐性の高い犯行の跡を目撃。 数々の協力と情報により、相手が警察とすら手が出せないほどの 凶悪集団である事が発覚したため、義の名に基づき、 イノを中心とした主力編成で、奇襲攻勢を仕掛ける事になった。 「ええーいッ!」 ぼがっ! 門番二人を速やかに殺害した後で、ノーラが杖でドアを叩き割る。 「チーム・デルタ! エントリー!」 イノの指示に従い、彼女に続いて他五名が一斉に突入。 「なんだオラぁ!?」 口々に悪態をつきながら、構成員と見られる者達が、 明らかに護身用レベルでない武装を取り出している。 サブマシンガンやガトリングガン、ロケットランチャーなど 軍隊ともやり合える非合法武装がてんこ盛りだ。 この分だとミサイルが飛んで来てもおかしくないだろう。 「死ねえオラ!!」 ずだだだだだだだだ! ぼがんぼがんぼがん! 自分達の施設だというのに遠慮会釈無く重火器を叩き込んでくる ゲボラ・マフィアの構成員。警察が手に負えないのも無理は無い。 むしろ警察の装備ではどちらかというと話にならないだろう。 それこそ軍警察あるいは軍隊を投入すべき相手だと見られる。 やむなく物陰に隠れて一時的にやり過ごす。 「ちっ、鬱陶しいでござる……!」 重火器の相手は苦手なゲイルがぼやく。 「俺が行って来るZE!」 ラケルが凄まじい勢いで飛び出し、サブマシンガン一丁を破壊。 「にゃろう! クソったれめがっ!!」 だが、重火器の数はあまりに多すぎた。 ラケルはやっとの思いで回避に徹するが、 退き際を失い、何発か命中しそうになる。 「ラケルさん!」 レオナは小さな壷を手に取り、ラケルの姿をすぐに思い浮かべる。 「召壷(しょうこ)フォーシブルサモン!」 するとさっきまで前衛にいたはずのラケルが強制召喚され、 小さな小さな壷からにょきっと出てきた。 「うお? レオナ、お前かYO?」 「危なかったッスね。これ、なかなか使えるッスよ」 得心するレオナに、イノも頷く。 「これは図らずとも実戦テストという事になりそうね」 「ならば、これは私の出番でござろう」 弓を取り出したゲイルが一瞬だけ廊下に飛び出す。 だが、彼もまた家宝の力を発動させていた。 「残輪(ざんりん)アザーセルフ、発動!」 『質量を持った残像』がゲイルの通過した地点に残され、 ひたすら弓を構えて囮を兼ねた援護攻撃を行う。 射線も当然そちらに向かうため、時間が稼げる。 更に敵の兵員も何名か駆逐出来たようだ。 「銃を撃つ人手が足りねぇ、誰か呼べーっ!!」 奥の方から声がしてくる。増援を呼んだらしい。 「ならば、ここは私の思いつきに任せてもらう」 レイビーは本を取り出す。コレも家宝である。 「想本(そうほん)インスパイアノート、我が閃きを具現せよ」 インスパイアノートに適当に書いた魔法コンセプトが、 魔力を代償に即座に具現化される。 ゲル状の不気味な物体が静かににじり寄り 敵の重火器の銃口や砲口を目詰まりさせた。 更にそのゲル状の物体は急加熱し、数千度の熱を放つ。 ぼばんぼがんどがん!! 火薬が暴発し、重火器類はすぐ使い物にならなくなった。 「うわあああああッ!?」 慌てて逃げ出す兵員達だが、勿論まったく逃がすつもりは無い。 「今度こそ俺の出番だZE! 色玉(しきぎょく)リコイルジュエル!」 ラケルの各関節部や身体の重要部分を守るように、 ビットのような、宝石のようなものが周囲に浮かび上がる。 それと同時に、魔力によってラケルの身体は強制的に宙に浮く。 両足の真下にもリコイルジュエルが配備されている。 「ソニックランナー、GO!」 ぼんッ! 足の下のリコイルジュエルが爆発。その重反動により、 ラケルは凄まじい勢いで前進する。 右折する曲がり角では左手を真横に掲げ、左手に配備された リコイルジュエルが爆発。急制動で強引に右折。 こんな無茶な軌道を繰り返し進み、強引に敵に追いついた。 「HAHAHA!」 肘を保護するリコイルジュエルの爆発の反動でパンチを叩き込む。 離脱する時は足もしくは手を保護するリコイルジュエルで退避。 反動だけで機動を取る無茶なヒットアンドアウェイを繰り返し、 その場にいた敵兵士全員を捻じ伏せるのに成功したラケル。 「フレイムバスター!」 「ウィンドバスター!」 「フリーズバスター!」 先程呼ばれた敵増援だろうか。魔法特化型の編成らしい。 重火器とは違った意味で鬱陶しい。 「私の出番ですね」 ノーラは周囲に鏡のような盾を顕現させる。 「鏡盾(きょうじゅん)カウンターミラーズ!」 次々叩き込まれる魔法をものの見事に弾き返し、 それらは術者に悉くヒットしていった。 打ち返された魔法を回避するような化け物みたいな者もいるが、 この程度の調練の度合いの兵では、どだい無理な話である。 ぼわっ! だが、跳ね返した火の魔法はたまたま術者を外れ、 ダイナミックにゲボラ・マフィア本部施設を火事にしてしまった。 「うぎゃあああああああ!」 逃げ惑う敵兵員。既に死傷者も出ているが、 そんな事イノ達には知った事ではない。 「最初からこうすれば話は早かったかもしれない」 むしろ乗り気ですらあった。 「そんな事言っている場合ではござらぬ、脱出を!」 「分かってる。施設より退避」 急かすゲイルの進言により、総員施設より脱出。 「チーム・アルファ、ブラボー、チャーリーは出口を封鎖。 一人たりとも逃がさないで欲しい。賊は殲滅あるのみ」 イノの指示で、各員バリケードを設置する。 恐ろしいほどの手際の良さであった。 「イノちゃん、ボスの顔とか見なくても良かったッスか?」 「興味が無い。どうせ見ても滅するだけだから」 恐ろしい事を淡白に話すイノ。 もちろん正面を担当する主力部隊のイノ率いるチーム・デルタは 誰一人逃がすつもりも無く、インスパイアノートの力で 物理結界を展開し、逃げ道は完全に塞いだ。 これで相手はことごとく焼死、あるいは窒息死だろう。 だが、数分後…… ずばぁぁぁぁぁん! 建物をぶち抜いて、人型巨大兵器ライディング・フレームが 一機飛び出てきた。恐らく首領のものであろうか。 「このゲポラ=ゲボラ様を よくもここまでコケにしてくれやがったな! 警察は脅しに数百人殺すだけで済ませたが、 手前ェ等は皆殺しだ!このライディング・フレーム 『シャル・カーニ』で叩き潰す!!」 「……さるかに?」 「シャル・カーニだ!」 ボケ倒すレオナに律儀にツッコむゲポラ=ゲボラ。 「死ねぇい!」 ミサイルを乱射してくる。市街地である事もお構いなしだ。 「レオナ! 例のを!」 「ナノ・マシン! ピンポイント展開!」 シャル・カーニに向けてのみナノ・マシンが展開され、 彼の制御するミサイルは明後日どころか、何処へと知れぬ方向へ さっさと飛んで行ってしまった。 「さあ、このヘレティックガンホークの 実戦テストに付き合ってもらう。 あなたの存在意義は、もはやその程度にしかならないから」 イノはガンホークを構えて、高々とジャンプ。 「つぇいッ!」 一撃でメイン・カメラ…… ライディング・フレームの頭部を斬り落とす。 暴れるシャル・カーニ及びゲポラ=ゲボラには構わず、着地。 即座に砲撃モードに展開しなおし、斧の盾を構える。 跳弾は全てそれで弾き返すに至った。 「ガンホーク、フルバーストモード」 砲口から魔力が漏れ出てくる。魔力を出来るだけつぎ込み、チャージ。 「斬神斬魔流最終究極奥技!」 「ひっ!」 ゲポラ=ゲボラは不利を悟り、退避準備に入るが、遅すぎた。 ちなみに斬神斬魔云々は、イノのただの思いつきだったりする。 「運命弾劾穿!!」 ぎゅあああああああッ!! 閃光が闇夜を貫き、光を描き、そしてシャル・カー二を一撃で穿つ。 バリアのような防御装置を 展開していたようだが、まったく意味が無い。 ぼぼぉぉぉぉぉん! 空中で爆散し、ゲボラ・マフィアは首領や建物もろとも滅び去った。 「すげぇ……!!」 端で見ていた一部の市民が呆然と事の成り行きを見て呟いた。 それに気付いた魔神軍一同が近寄って言う。 「……終わった。思ったより時間がかかってしまった」 「いや早すぎるから充分!!」 彼等の見積もりでは持久戦に持ち込んで、 消耗したところで軍警察の救援待ちで 勝てるかと思っていたぐらいだ。 「早過ぎる……? やはり勇者軍と比べて軽く見られていたのね。 まあいい。覚えておきなさい。私達は魔神軍。 勇者軍のカウンターとして生きる者達の集団よ」 「はぁ」 と言われても市民には実感がまだ湧ききらない。 化け物集団なのが分かりきっている勇者軍ほど、 地域に浸透しきっていないのだ。 だが、この戦果を見れば勇者軍同様に 異様な集団だというのは分かる。 恐らく、これをきっかけに知名度は更に上昇していくだろう。 そう思うと、レイビーはほくそ笑むのを止められなかった。 と、格好良く決めていたところに、ポメラニアンが寄ってくる。 「きゃんっ」 「お散歩から帰って来たのね」 イノが優しく抱き上げてやると、ポメラニアンのクロは へっへっへっと犬らしいリアクションを取り、甘える。 「そ、それは?」 「ウチのワンちゃんよ」 妙に可愛らしい表現をして、一瞥もくれずに去って行くイノ。 「それじゃ、また何か大事があったら 魔神軍を遠慮無く呼んで下さい。 スポンサーはグリーン・クロスなので そちらでも受け付けますから」 「24時間いつでも、ってワケにはいかねぇが、 常識の範囲内でよろしくちぃーっス!!」 「はあ」 最後に、ノーラとラケルがしっかり売り込みして後を追う。 「……結局何なんだろう、魔神軍って?」 「よ、よく分からんがありがたやー、ありがたやー!」 盛り上がる民達は、口々に魔神軍の勇名を各地に広めた。 以降、魔神軍の勇名は悪名高きゲボラ・マフィアを叩き潰した 精鋭私設軍として各地に轟く事になり、いずれは勇者軍と 双璧を為す人類史上最強の私設軍となっていくのであった…… だが人々よ、記憶せよ。 この物語さえも、伝説の一端に過ぎない。 ましてこれは、その断章である故に…… <勇者の館R 完結>
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名前 外見 職 レベル 生産種別 備考 0robas トレジャーハンター 81 アクセサリ 8 現メイン rupert ソウルロード 101 細工 8 コロ、タワー用 luitpolt マイスター 53 武器生産 8 趣味 勇者王と呼ばれる事に違和感があるんで基本的に呼ばないでいいです。 ゲーム内名もややこしいんで別に呼ばないでいいです。 チャットはラテール内のことなら反応するかも位です。 身内話で盛り上がっているときは大抵チャット表示OFFにしているので どうしても用事があるときはささやき等でお願いします。